幸せの方程式(2)

【 幸せ = 無 × ワクワク × シンクロ二シティ 】

 

僕の心は激しく叫んでいた。

 

全身にチカラが入り、緊張している。

 

その力みと緊張感は身体の許容範囲を超え、僕の両肩と両腕、そして握り拳とを、ワナワナと小刻みに震わせていた。

 

 

「麻里奈を許すなんて、絶対にできない。

 

オレと同じ境遇で、麻里奈を許せる奴なんて、誰一人いない!

 

もう、限界だ。

 

絶対に許せない!

 

絶対に愛せない!

 

もう麻里奈と離婚する以外に道はない。

 

麻里奈との離婚は正義の離婚だ。

 

オレは何も悪くない。

 

悪いのは麻里奈だ!

 

こんなひどい目に遭って離婚しないなんて、オレはただのバカだ。

 

麻里奈と離婚するオレを非難できる奴なんて、誰一人いない!」

 

 

僕は、シャンカールに言われた通りに、麻里奈を許せない気持ち、怒り、悲しみ、胸の痛み、失望、絶望を、全身で、徹頭徹尾、味わい尽くしていた。

 

しかし、ふとした瞬間、そのネガティヴな感情に切れ間が射した。

 

三日三晩、ザァーザァーと激しく降った土砂降りの雨が止み、チュチッチュチッ、という小鳥のさえずりと共に、ネズミ色の空の隙間から、少し黄色味がかった白い一筋の光が大地に射し込むように、一瞬、僕の感情に空白が生じた。

 

と同時に、カラダの水分が急激な速度でお腹に集結し始めた。

 

お腹の赤ちゃんが、元気に激しくお腹を蹴り上げるように、カラダ中の水分が僕のお腹の水圧をグングン、グングンと押し上げる。

 

そして、お腹のスペースに入り切れず、行き場を失った水分が、背骨に沿って上へ上へと上昇し、噴水のようになって僕の体外へと放水された。

 

まるで、満水状態に貯水されたダムの門が、ある日突然、一番低い位置にまで押し下げられ、位置エネルギーをたっぷり蓄えた水たちが、有り余った位置エネルギーを爆発させて川へ飛び出し、「ワアー!」という雄叫びを上げながら、われ先にと上流から下流へ全力疾走で駆け下りていくかのごとく、僕のお腹に集結した水分は僕を「ウォー!」と嗚咽させながら上昇し、ノドを通過し、3つのルートに分かれて、僕の体の外へと飛び出した。

 

一つ目のルートは、目。

 

二つ目のルートは、鼻。

 

三つ目のルートは、口。

 

僕は、全身からかき集めた水分を、涙、鼻水、ヨダレ、に変化させ、噴水のように体外へと放出し始めた。

 

僕は、神を信じてもいないのに、心の中で神に叫んだ。

 

 

「もう、イヤだ。

 

何で、オレは、麻里奈を許せないんだ。

 

もう、これ以上苦しめないでくれ!

 

麻里奈を愛せない苦痛を味わうのは、もうイヤだ。

 

麻里奈を許せないのは、もうコリゴリだ。

 

麻里奈を許させてくれ!

 

麻里奈を愛させてくれ!

 

頼むから、もうこれ以上麻里奈を憎ませないでくれ!」

 

僕は、体内と心内で、何が起きているのか理解できなかった。

 

が、その時、数学の方程式らしきものが脳裏に浮かんだ。

 

それが、

 

「 幸せ = 無 × ワクワク × シンクロ二シティ 」

 

 

 

すなわち、幸せの方程式だ。

 

 

 

つづく