幸せの方程式(20)

【潜在意識 ⑩ 心の中に突っかかっている】  



「確かに彼は不幸な人生を選んだのかもしれないですが…。」


僕が、自信なさげに答えるのとは対照的に、シャンカールは、少し語気を強めた。


「ユウは、客観的に他人を見る時であれば、冷静に判断できる。

だから、『彼が自分から不幸を選択した。』ということは、ユウもある程度理解できるはずだ。


しかし、いざ、ユウ自身が不幸を体験しているとなると、『ユウ自身が自分から不幸を選択した』と冷静に考えられなくなる。

つまり、自分を客観的に見るということは、意外にもかなり難しいことなのだよ。


だからこそ、ユウはミーに会いに来たのではないのかね?


『自分では、どうにもならないが、ミーという客観的な人間に会うことで、自分を客観的に見られるようになる。』ということをユウの潜在意識は知っている。

だから、ユウはわざわざ、ここまで来たのではないのかね?


つまり、ユウがここに来たことも、医者だった彼が不幸を選択したことも、『潜在意識に従った』という点では共通している。

彼も、ユウも、『潜在意識』に従って自分で選択し行動しているのだよ。


話を元に戻すが、医者だった彼は、『将来の幸せのために、しばらくの不幸を自分から選んだ』ということは、もう分かったね?」


「確かに彼は『将来の幸せのために、しばらくの不幸を自分から選んだ。』ような気がします…。」


「そうだ。そして、ユウも同じなのだよ。

もし、将来の幸せのために、しばらくの不幸を経験しなければならないのだとしたら、ユウはしばらくの不幸を選択するはずだ。


将来の幸せのためならば、苦しかろうが辛かろうが、しばらくの不幸を選択するのがユウだろ?」


「僕は『将来の幸せのためなら、苦しく辛い不幸を自分から選択する』人間だと?」


「そうだ。実際、不幸を味わったユウと不幸を味わわなかったユウでは、どんな違いが生じると思うかね?


不幸を味わったユウは、不幸を味わなかったユウより、人の気持ちが分かるようになったり、人を思いやれるようになったり、小さな幸せに大きく感謝できるようになったりするんじゃないのかね?


『ユウの苦しく辛い不幸な経験は、ただマイナスでネガティヴなだけの経験なのか?

それとも、その不幸な体験の中には、プラスでポジティブな側面が少なくとも一つはあるのか?』ということだよ。」


「それでも…。」


僕は、シャンカールの話に同意することを渋った。


心のどこかで、シャンカールの話にうなずけない。


何かが、僕の心の中に突っかかっている。




つづく