コトちゃんはひきこもり(6)

【今からは空間のお話】



コトハに、「僕は、不幸を選択して生きている。僕は、永遠に生き続けるし、10万年前から生き続けてきた。」と言われた。


コトハの言ってることが、わからない訳ではない。


確かに、反論できなかった。でも、一般的な考えかたとは、かけ離れている。

頭では、分かる気もするが、心では、とうてい理解できない。


そんなことを考えていると、ふと、「さすがに疲れたから、ひと休みしたいな。コーヒーでも、飲むかな…。」と思った。


と同時に、コトハが口を開いた。


「お兄ちゃん、ちょっと、疲れたでしょ?アイスコーヒーでも、作ってあげるね。」と、コトハは楽しそうに、台所の方へと歩いて行った。


「コトハは、オレの考えてることが全部わかるのか?」と、僕は、不思議な気持ちになった。


もしかしたら、これは夢なんじゃないかと思い、ほっぺたをつねったが、やはり、現実だった。そして、ボーっと、物思いにふけった。


「それにしても、昨日まで、笑顔を見せなかったコトハが、明るくなった。何だか、難しい話をするけど、怪しい宗教に入った訳でもなさそうだから、まあ、いいか。これで、ようやく、お父さんお母さんも楽になるだろうし…。」

そんなことを想っていたら、コトハが、ストローの差してある氷入りのアイスコーヒーを片手に持ち、チャリリ、チャリリと音を鳴らしながら戻ってきた。


そして、部屋に入るなり、話し始めた。


「さっきまでは、時間のお話! 今からは、空間のお話よ!」


「まあ、ちょっと、待てよ。まずは、コーヒー飲ませろよ。」と言って、僕がコトハの持っているアイスコーヒーに手を伸ばしたが、コトハは、僕の手の先にあるアイスコーヒーを、遠ざけるようにして笑っている。


コトハの、わるふざけだった。


コトハに昔の笑顔が戻ってきていることが嬉しくて、僕も笑った。


「おい!よこせっつうのぉ!」


セミたちも、笑ってる。


ミーン、ミー、ミー、ミー…。



つづく