コトちゃんは引きこもり(7)

【お兄ちゃんのカラダはいくつある?】



「お兄ちゃんには、もう一つ、基礎知識を学んでもらわなきゃならないのよね~。」


アイスコーヒーを、僕に手渡しながら、コトハが言う。


「お兄ちゃんもコトちゃんも、時間軸では、永遠だということは、分かったわよね?」


僕は、「まあ、分かったことにするかな。」と、ストローでアイスコーヒーをかき回しながら、適当な返事をした。


「今度は、空間も、永遠ということ。つまり…。」と言って、コトハは、黙った。


「つまり、何?」と、アイスコーヒーをストローで吸い込みながら、僕が適当に返事をすると、コトハは、勇気を振り絞るかのようにして、真剣な表情で、静かに声を出した。


「あのね…。お兄ちゃんとコトちゃんは一つなの。」


突拍子な答えに、僕は鼻からコーヒーを吹き出し咳(せ)き込んでしまった。


しかし、そんな僕に「大丈夫?お兄ちゃん?」なんて同情する気はさらさらないという調子で、コトハは「お兄ちゃんが、コトちゃんの話を、いい加減に聴くからよ!」と言って、僕に、裸のボックスティッシュを投げた。


男の部屋だから、ティッシュボックスにオシャレなカバーなどは、付いていない。


僕は、白色のティーシャツに飛び散ったコーヒーをティッシュで拭きながら、「鼻、イッテエっつうの!」と少し、怒ったフリをした。


しかし、コトハは、容赦なく、「基礎知識の講義」を続ける。


「例えば、お兄ちゃんの体はいくつある?」


「一つに、決まってんだろ。」


「本当に?」


「おー。コトちゃん、今度は、何が言いたいだ?」と、僕が、しょうがねえ奴だなと言わんばかりの口調で応えると、コトハは、僕の気持ちなど関係ないという態度で、質問を続けた。


「じゃあ、聴くけど、お兄ちゃんの体には、いくつ骨がある?」


「骨は、いっぱいあるさ。何個あるかは知らないけど。」


「じゃあ、お兄ちゃんの体は、いっぱいあるってことよね。」


僕は、「あのなあ、コトちゃん。そういうのを屁理屈っていうんだよ。子どものなぞなぞじゃねえんだろ?」と応えながらも、頭を柔らか~くする準備を始めていた。


「コトハのやつ、今度は、何が言いたいんだ?」


突然、セミたちが鳴きやんだ。




つづく