幸せの方程式(7)

【 有=無 ⑤ パラシュート 】


富士山の斜面に沿って、上へ上へと急浮上していた僕の体は、押しつぶされそうになったと同時に、高度の上昇をストップさせた。


映画のスクリーンに映っていた、頭に黒のシルクハット、右手に黒のステッキを持った、チャップリンさながらの手品師が、映画のスクリーンを切り裂き、生身の人間として、こちら側へと飛び出してきたかのごとく、僕は、ニュルっという湿気を帯びた感覚を体に感じながら、富士山の上空に、ポッーンと放り出された。


と同時に僕の体は15ポンドのボウリング玉のように重くなり、垂直に真っ逆さまに急落下し始めた。



しかし、急落下してから1秒も経たないうちに、摂氏0度に冷えた僕の背中から、真っ白い落下傘が開き、僕は、フワリフワリと宙を舞い始めた。


周りを見渡すと、真っ白い落下傘を広げたパラシュート部隊の仲間たちが、僕と同じように、フワリフラリと宙を舞いながら、ゆっくり高度を下げている。


 

まるで、1万歳の誕生日の日に、馬鹿でかいバースデーケーキに突き刺せられた1万本のろうそくの火を、一気に吹き消すことができる膨大な肺活量を持った筋骨たくましいプロレスラーが、


公園に行って、花を咲かせ終わり老婆の白髪(シラガ)頭のようになったタンポポの綿帽子を100本抜き取って、綿帽子に付いている約1万個の真っ白な綿毛を、自慢の肺活量で一気に吹き飛ばしたかのような光景が、僕の目の前に広がっている。


しかも、真っ白い落下傘は、端正な六角形で、キラキラと輝き、とても美しい。


富士山の傾斜23度の斜面に着地した僕は、パラシュート部隊の他の仲間たちと共に身を寄せ合い、いつしか深い眠りに落ちていった。


つづく